一歩進んで一回休み「ぜぇっ、はぁ……っ、は、あ」
雲に覆われ、僅かに明るくなりだした早朝。出歩く人の姿のない静かなイシュガルドを走る冒険者の姿があった。息は切れ、足取りはふらつき、いかにも「倒れそうです」といった様相だ。
「も、もう無理……休憩……」
そう言ってずるずると石畳の階段に座り込む。
彼女が、わざわざこうして早朝の皇都を息を切らして走っているのには、程々に深い訳があった。
「……君はまず、体づくりから始めないといけませんね」
黒い鎧に身と顔を包んだ、暗黒騎士の師は腕を組んで、少し申し訳なさそうにそう答えた。騒動のほとぼりも冷め、やっと暗黒騎士としての一歩を教わらんと訪れた彼女に突きつけるには、あまりにも酷だとは思ったのだろう。
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