攻防ほんのりとした光が次第にちかちかと力強く瞼の奥まで届いてくる。振り払えない眩しさにもどかしく思いながらもぼんやりとした頭で煉角は朝という単語を何とか叩き出した。
そうだ、朝だ。夕べは遅くながらも訪れたこの家の主が先に起きて暖簾を引き上げたのにちがいない。こちらはまだ寝てたいというのに。きちんと了承を得てからやって頂きたいものだ。
起床を促す陽の光を避けるべく仰向けだった体をうつ伏せに寝返るべく体を捻る…が、敷布に当たった顔の違和感に煉角の頭が警鐘を鳴らす。
ない。いつもの馴染みある抵抗感が顔の皮膚に感じられない。可能性を僅かに期待しながら震える手で自分の顎をなでる。
本来髭があるはずの場所。そこは何度撫でてみてもつるりとした感触だけを手に伝えてきた。
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