士官学校の志願はつつがなく了承され、リンハルトはめでたく修道院の門をくぐった。それから、入学志願生に紛れている「先生」と出会うまでは、それほど時間はかからなかった。
「見たことのない模様ですねえ」
「そうであろう? 吾輩も長年研究をしているがね、ここ百年ほどに見られた紋章のどれとも似ていないのだよ。ここに収められている文献も確認したが、やはり見当たらない」
実に興味深いが、しかし……と、ハンネマン教授は思索に没頭し始めた。高名な紋章学者である彼は、入学初日にその門戸をたたいたリンハルトに怪訝な顔をした。生徒からの指導志願は自由に許可されているが、まだ講義は一つも始まっておらず、ただの物見湯山かと考えられたためである。しかしながら、しばらく言葉を交わすと、その認識は無事改められたようだった。
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