三日間の世界征服11/10 pm14:13
猫も微睡むような昼下がり。
左馬刻の事務所には、肌をピリピリと刺す張り詰めた空気が充満していた。
「つーわけで、俺様は恋人と雲隠れすっから。オジキ、後は頼んだわ」
『オウ、まかしとけ』
スマートフォン越しに、上役である男が豪快に笑う。2、3言葉を交わし、通話を切った左馬刻は、フー、と気だるい息を吐く。長かった。すばらしく、長く険しい一ヶ月だった。これで全てが報われる。煩わしい根回しは終いだ。
物々しく、電源を切ったスマートフォンをデスクに置く。これで仕事は終わりだ、というポーズ。
懐から取り出した煙草を咥えると、すかさず、傍らの部下が火を差し出してくる。仕事終わりの一服は、至福の時間だ。これからのことを考えると、これ以上うまい煙草はないとさえ思う。
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