犬友「ええよ」
朱に交われば赤くなる。
それはまったく確かなことで、悪い仲間が出来ればどんな優等生も段々悪いほうへ染まっていくし、行儀が良い連中の中に放り込まれればどんな悪童も少しはましになる。態度もそうだし、言葉もまたしかりだ。
西国訛りに囲まれれば西国の、京の都で京言葉を聞けば京言葉に、知らず知らず染まっていく。
もともとは壇ノ浦の生まれで、生まれた時からずっと彼の地の訛りで話していたはずの友一も、都で十年あまりを過ごすうちに最近はすっかり生粋の“みやこびと”のような言葉遣いをするようになった。
たとえば、頷くときの、ため息のような「はぁ」という言葉ひとつとってもなんともはんなりしている。まるで上品な深窓の令嬢のようだ。
1879