死が二人を別つまで(ああ、死ぬんだな。私)
月光に照らされた真っ白な雪のキャンパスに、広がる鮮やかな赤色の液体。それは今も尚広がり続け、余白を埋めるように雪の結晶を赤く染め上げていく。周りに自分以外の人間はいない。いても手遅れだろう。そう確信できる程、彼女は自分の現状をよく理解できていた。最早痛覚は機能していないどころか、全身の感覚はほとんど無くなり、唯一感じるのは寒さのみ。最初こそ少しでも溢れ出るものを抑えようと腹部に当てていた手も、最早意味等なしていなかった。どんなに抵抗しても、身体どころか指先一つも動かせない。じわじわと近づいてくる"死"に独り、その瞬間が来るまで彼女に出来る事は何もなかった。
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