タイトル未定*
――明るく朗らかで、そこにいるだけで場を明るく照らすような温かさを持つヒノエ。その後ろについて回り、輪に入っているのだかいないのだかよくわからぬ距離で佇むだけで、こちらから声を掛けてもにこりともせずひと言ふた言返すだけの無口な妹。扱い難く近寄り難い印象の少女は今、背筋を伸ばして玄関前に立ち、仇でも睨むような目でこちらを見据えていた。
「姉さまは具合を悪くして寝ています。帰ってください」
震える声でそう紡ぐミノトの姿に、隣に立つミハバと顔を見合わせる。
自分たちは何か彼女を怒らせるようなことをしただろうか? こんなにも強い感情を滲ませる姿は初めて見る。
どうする?と目で問うミハバ。私はしばし迷った末に、ミノトの方へと一歩踏み出し持っていた手提げを差し出した。眉を顰めるミノト。
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