しょうばいろっくおとぎ話『羽根なし鶴の恩返し』 東国の雪深い山に、一羽の鶴がいた。よほど長く生きたその鶴は強く賢かったが、とある壮絶な裏切りにより罠にかかってしまい、村外れに暮らす青年に命を救われた。義理堅い鶴はなにか恩返しができないものかと、美しい人間に化けて彼の家を訪れた。鶴は孤独な青年に甲斐甲斐しく世話を焼き、青年もまた鶴に心を開いていった。このまま嘘をつき続け夫婦になるのも良いかもしれない、鶴の胸にそんな思いがじわじわと募った。しかし、たかが野鳥が人間と連れ合うなんてできる訳がない。彼に嫁ぐなら鶴であることを隠し通し、ただ人間であらなくては。鶴は自らの羽根を毟り取り、鶴であることを捨てることにした。激痛に息を殺して耐えた。全ての羽根を布に織るまでの一晩、姿を見ないという約束を彼が守ってくれるなら、羽根を捨てて生涯人間と偽って生きていこうと決めた。しかし、彼は鶴を裏切った。
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