北風小僧と寒太郎1
「そういやさ、二人はカンちゃん先輩に会った?」
「カンちゃん先輩……?」
「いや、知らねえな……」
悠姫の言葉に、恵と創真は顔を見合わせ首を傾げる。この二人が極星寮にやって来て二週間ほどになるが、カンちゃん先輩なる人物を未だに目撃したことは無かった。
「カンちゃん先輩って言うのはね、私達の一個上の先輩なの。名前が三沢カンタロウだから、カンちゃん先輩」
「あ、カンタロウは寒い太郎、って書くんだよ」
「なるほどなー」
榊も会話に加わり、そんな補足をする。恵はそのカンタロウ、という名前の印象からじっとりとした厳つい男を想像し、身を震わせた。悠姫はそんな恵の心象を見透かしたかのように、カラカラと笑う。
「大丈夫だよ、カンちゃん先輩は怖い人じゃないから!どっちかと言うとお調子者って言うか、とにかく明るい人だし!」
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