甘ったるい砂糖菓子のベッドに沈んでしまいたい 鼻腔をくすぐる芳しい匂いに、依織は薄い瞼を持ち上げる。
白いシーツ、隙間から差し込む眩い朝日、情事のあとが仄かに漂うベッドルームと朝食の香り。――ふわふわと眠たく欠伸を零して、まだすこし気だるさの残る身体を依織はゆったりと動かした。
甘ったるい砂糖菓子のベッドに沈んでしまいたい
穏やかな朝だった。外の喧騒から切り離され、まるで世界にたったひとりしか存在しないのだと錯覚させるような居心地の良さがあった。――否、この場合は『世界にたったふたり』と表現した方が正しいのかもしれないな、と。空想にふけるロマンチシストのような思考を依織は静かに享受する。
「依織」
部屋の外から名前を呼ぶ声がした。顔を上げ、上半身だけ持ち上げて、乱れの残る白いシーツの海の上で依織はゆったりと頬杖をつく。視線を扉の方へ動かしたと同時にドアノブががちゃりと音を立てて回されて、遠慮無く部屋の扉が開かれた。
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