――それは幼い頃に交わした約束だった
「えへへ、ありがとうロディ、絶対なろうね!僕はピアニストに」
「ああ、俺はあんたのために調律師に」
「「約束!」」
――あの時の小さな指の繋がりも、あいつと笑い合った日々も今となっては全部思い出に過ぎない。今の俺には何にも無い。夢も誇れるものも、家族も、…隣にいたあいつも全部この手から離れていった――
もしも今願いが叶うなら、もう一度、あいつに会いたい。けれど今の自分を見たら彼はどんな顔をするだろうか?そんなことばかり考えて、頭の中から消し去る。
会えないのだ。どんなに願ってもどんなに祈っても。今どこにいるのかすらわからない彼を思いながら今日も生きるために仕事をする。
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