夏の夜、まだ見えぬ、いずれ見える希望 森に殴り込んで、海に飛び込んで、買い込んだ同人誌を読み込んで、そうしてめいっぱい遊べば、いつの間にやら夜は来た。いつかのサバフェスと同じように、黒に流した蒼い波筋、埋め尽くさんという眩い星々。昼の溌剌な姿とは別の、静かな浜辺を堪能するのは、今日だけは自分達だけだった。
「あんだけ振り回しといて、寝る間も惜しんで夜に出歩く必要、なんかある?」
悪態ばかりで黙って歩かない精霊王を振り返り、藤丸立香はにこやかに微笑む。夜の暗闇はただでさえ全てを暗くするのだから、精一杯の明るさで。
「昼間は付き合ってもらったから、オベロンの行きたそうなとこ行こうと思って!」
「俺が今行きたいのは、君達が殴り込んでこないくらい深い穴の底だなあ」
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