進捗 何重にも黒を編んだような、深い深い闇の中。それは唐突に目を醒ました。
此処はどこだ。
低く呻く。しかし声にはならない。それは唇や声帯、喉を震わせる器官を持っていなかった。沈む闇は底が無く、天地すら覚束ない。広いのか、狭いのか。それすらも分からぬ箱に、有象無象がみっちりと詰まっている。無数のざわめき、数多の囁きがごうごうと打ち寄せては遠のいていく。ただ延々と蠢いている。
なんと不自由なことか。
かつての己を手酷く罵ると、それは手足の無い身体を大きくねじった。何度か繰り返す内に、異物と認識されたらしい。それは有象無象の中心から、外界へと弾き出された。
少々高い場所から落ちたが痛みはない。別れを惜しむほどの感慨も無く、土塊の転がる地面を腹這いに進んだ。細い風の音が聞こえる。これを辿れば外に出られるだろう。音を頼りに石壁に張り付き、隙間に身を滑り込ませた。
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