総務の夢野さんと作業員の帝統くん入社時の会社の説明、福利厚生や給料についてなどなど。
手元の資料と映し出されるプロジェクターからの映像を真面目に見つめていた。手元の資料に必要なことをメモしながら、とても真剣に、有栖川帝統は見つめていた。
正確には、説明している人を真剣に見つめていた。
帝統がこの工場に働きに来たのは、単発のバイトでそこそこ給料が良かったからだ。
3日何も食べておらず、公園の水だけでなんとか命をつなぎ、何かしらの日雇いのバイトでもしなければと思っていた時に見つけたのが、この工場の求人広告だった。
なんとかあと数%残っていたスマートフォンから電話をかけ、即日採用してもらった。
この工場は、製品にシールを貼ることを主とした工場で、手先の器用な帝統はすぐに仕事に慣れていた。数日働けば、この工場で扱っている製品のほとんど対応できるようになった。あとは熟練の技が必要な、ハイブランドの化粧品を残すのみとなっていた。
6765