Once I met the moonlightOnce I met the moonlight
かちゃかちゃと鳴るシルバーの音。歓談に勤しむざわめきと、揺れるグラスがぶつかり合う煌びやかな衝突音。それなりの格好に身を包んだ紳士淑女を照らす仰々しいシャンデリア。その全てがこの集まりを何か豪華絢爛なもののように見せかけていた。ビュッフェに並んだ料理も虫が食うように減り始めていて誰も見向きもしない。大体みな手元の酒やら目の前の人間の高慢ちきな話題やらしか召し上がりたくないようだ。大して美味しくもないだろうに──反吐が出る。ここにいる人間の大半は、佐倉山の社交場で得た自分の人脈に酔いしれることが趣味みたいなものなのだろうから、まあ十分に酔わせてやってもいいが。
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