夏の終わりの秘密 / 🌹🎀 その秘密は、日課の報告で発覚した。午前のレースを終えたアステルは、本日の報告書の提出にクロービスの執務室を訪れている。平時とほぼなんら変わらない勇者の日常の一幕であるのだが、この日はある一点だけが違っていた。机の向こうのクロービスへ書類を手渡した時の怪訝な様子に、アステルは原因へと思い至ると申し訳なさそうに弁明を始める。
「ええと、実は先日いただいた香水をつけてみたんですけど……。もしかして駄目だったでしょうか?」
贈り物の内容からとある人物に思い立ったクロービスは、眉をひくつかせると何かを言おうとして結局止める。その様子に勇者としての服務規程に問題があったと思ったのか、アステルは不安げに佇んでいた。クロービスは即座に今後考えられる面倒事を勘案し、想定した人物の最近の挙動を踏まえて処遇を決める。
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