忘れてほしい 久しぶりに野郎二人で宅飲みでもしようか、という話になった。そういう事になると、なぜか彼はわざわざ字エデンの片田舎にある6畳間までやってくる。ここはなんだか落ち着くんだよね、とニコニコと話す彼は、どうみてもこの狭い部屋には大きすぎるのだが、長い足を畳の上に投げ出し、窓際の壁に凭れてだらりと寛ぐ姿を見ると、なぜか文句が言えなくなるから不思議だ。
「レオス君に、一つお願いがあるんだけど」
「借金以外なら相談に乗ってもいいですよ」
そんなんじゃないよ、と笑いながら、彼が続けた。
「薬をね、作って欲しいんだ」
「不老長生の薬の話ならダメです。あれ、色々と大変なんですから」
そう言うと思った、と彼が笑う。
「そうじゃなくってね、『忘れる』薬。
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