交換条件「布地の仕入れ?」
目の前のヴァルシャンが小さく頷いた。続けて、と促せば詳細な情報が伝えられた。
今回の依頼はヴァルシャンからの頼みにしては不可思議な依頼だった。期限に余裕はあるし、相場から考えても報酬は高いし、回数も一度切りでは終わらない。太守からの頼み、とヴァルシャンが話していたが、付き人ならそれくらい他の業者に普段頼んでることは分かるのではないだろうか。真意が読めず、いまいち気が進まない。
「……その単純作業、私じゃなくてもいいんじゃない?」
「いや、どうしてもあなたにと」
「へえ、じゃあ私からも交換条件を出そうかな」
身構えたようにヴァルシャンの瞳が瞬いた。私も笑みを作る。職人だって仕事を選ぶ権利はあるのだ。
957