魔法使いの一生は長い。でも、終わりは誰にも等しくやってくる。突然の別れになってしまったのが不幸だっただけ。西の国の丘に建てられた墓標を前に、二人の男が佇む。太陽は薄く伸びた雲の陰に隠れ、はらはらと雪が舞っていた。
曇天の寒空の下、透き通った空気は身も心も切り裂くように冷たかった。墓標の前に立ち尽くすムルは、象徴的な帽子を深々と被ったまま、何かを口にすることは無く、マントだけが風に揺れてわずかに音を立てている。
その隣で墓標を見つめるフィガロの表情は、なんとも言えないものだった。厄災戦の折、賢者を身を賭して護ったシャイロックは、同じ場所で戦っていた魔法使いたちの目の前で石になった。長く生きる中で、幾度となく魔法使いの死を見てきたが、今まで見たどんな魔法使いの死に際より、なぜだか美しく見えた。
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