【蘭カミュレン】トリニティースター 朝露に濡れた葉がささやかな風に揺れ、葉先から雫を垂らす。
土に根付いた幹の表面は、微かな木漏れ日を反射させスパンコールを纏ったように煌めいている。
時折、木々達の葉が囁く。
苔むした匂い、腐葉土の香り、澄んだ空気を肺に送る。
神宮寺レンは、鼻歌を奏でているときだけ森の中に居た。
手には鋼鉄の中に潜む《神託の巫女》が握られていようとも、レンの精神は夜が明けたばかりの森の奥へと誘われるのだ。
歌はいい、こんなにも心安らぐ。自分だけの居場所を作ってくれる。
たとえ法に否定されようとも。
《シェパード1からハウンド5へ。もうすぐ積み荷の確認がとれる。……聞いておるのか》
無線から流れる荘厳な声によって、レンの意識は精神の森から腐敗臭のするスラムの路地裏へと引き戻された。
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