伯爵様と御曹司の7日間パリの旅 Eternal Loveようかん
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カミュは早々に機内食を下げさせ、鞄から羊羹を取り出した。
書道であつかわれる墨のような形をした羊羹は持ち運びしやすく重宝している。
箱から押し上げるように先端を突き出し、さらに包装を破く。すると、機内灯に照らされ、艶を帯びた黒い素肌が現れた。黒糖と寒天と小豆で作られたそれは、見ようによっては磨かれた鉱石のようでもある。視覚的に艶を楽しんでから、カミュは素肌に噛り付いた。
黒糖の深い甘みが噛むほどに口に広がる。硬さ小豆の比率もいい。あえて軟かさではなく硬さと評する。噛んだときに不快さを与えずに食感を楽しめる羊羹は数えるほどしかない。出立の直前にわざわざ銀座で購入した甲斐があったというもの。
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