雨と、二人と、一つの傘 私は雨が嫌い
濡れるのが嫌だ
ほの暗いのが嫌だ
行動を制限されるから嫌だ
せっかく髪を綺麗に整えても、拡がって台無しになってしまうのが嫌だ
なにより、雨が貴方の匂いを掻き消すようで、嫌だ
「やだなぁ…」
窓の外を苦い顔で見つめながら、ため息混じりにぽつりと呟く。
不機嫌の空気を察したようで、ビリーは手元の本に落としていた目線を私に向けて、あ、と思いついたように私に提案した。
「ねぇ、散歩に行こうよ」
「なんで…」と言いかけた口を噤む、だってなんだか、凄く楽しそうな顔をしていたから。
そんな顔を見せられたら、不満のひとつも言えやしない。
渋々ながらも、ビリーの提案なら…と、一本の傘と、大好きな人の右手を持って、憂鬱な雨の世界に出ることにした。
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