泣くということ 君はよく泣く。
嬉しくても、悲しくても、寂しくても、怒っていても、泣く。
最初の頃、僕にはその涙がよく分からなかった。
悲しかった、悔しかった、腹が立った、もちろんその感情の理屈は判る。
ただ、逐一感情が涙の粒となって流れ出る様が、兎にも角にも不思議で仕方がなかった。
その上、君は「泣くのは嫌い」だと言う、直ぐに泣く自分が嫌いだとも。
こいと本人は気付かれないように繕っているつもりだろうけど、生憎隠すことに関しては下手くそな君は、その表情や声色から、今にも泣きそうだとか、泣いていただとかを隠せていた試しがない。
そうだ、気付けば僕は〝泣く〟と言う行為そのものを、忘れてしまっていた。
意識して忘れた訳では無い、気付けば〝泣けなく〟なっていただけだ。
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