その日、俺は文字通り「飛び起きた」。こんなに何かに急かされるように起きるのは初めてのことだった。サンタクロースがやってくる朝だって、テストの日だって高校受験の合格発表の日だって、こんな風に起きたことはない。何だかとんでもなく不吉な夢を見た気がするのだが、起きてしまえばあるのは嫌な感覚だけで、夢の手がかりすら掴めそうもなかった。はあ、はあ、と息を吐く。肩が激しく上下する。汗でぴったりとパジャマが張り付いていて気持ち悪い。はあ、と大きくため息をついて顔を覆って…違和感。
なんだかいつもと違う。例えば、顔を覆ったときに指が触れる位置。例えば、肌のざらつき。髪の硬さ。自分がこれまで所持していたものと全く違う荷物を今、抱えている。恐る恐る顔を覆う手を外し、両手を見た。
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