来なさい、の一言に肩を震わせ、近づいてくる小さな影。センゴクはそれを待ちながら、二週間前よりはマシになったと思う。拾ってきた時はこの世の全てに怯えているようだった。話の振り方にもしばらく困らされたものだ。
ロシナンテは恐る恐るセンゴクの机の前に立ち、ぎこちない敬礼をした。執務室に震えた声が響く。
「な、なんでしょうか、センゴクさん」
「そんなに怯えるなと言っているだろう」
「す……」
「"すみません"は禁止だ」
「……いご、気をつけます」
「そう、それでいい」
以前ひどく怯えられたのを思い出して、センゴクは撫でようとした手を引っ込めた。暴力の前兆と勘違いされたのだと分かったとき、彼の『身寄りがない』の裏が見えた気がしたのだ。同時にわかった。それが触れるような話題でないことも。
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