楕円の矜持ハルとがうさん 出会って丸二ヶ月くらい
中河内秋は朝に弱い。
しかしいくら朝に弱くとも、学校、しかも寮生活でカリキュラムも決まっている警察学校という枠組みの中で生活している以上、定刻には起き出して活動しなければならない。なんとか身支度を整え、朝の走訓練を終え、朝食を摂り、校舎まで登校。ホームルームの終わる頃、彼の意識はようやく覚醒する。
そんなわけなので。
「……ハル、今日、眼鏡は?」
「なんや、今気付いたん?」
ホームルーム前から顔を合わせていたはずの、いつもと印象の違う友人の姿も、その時やっと認識したのだった。
「部屋に忘れてもうてん。教場の手前くらいで思い出してな」
友人、招春寺卍里はそう言って、灰茶の髪を耳に掛ける。流れた髪から内側の萌黄色がさらりと覗いた。普段と違い阻むものなく顔に触れてくる毛先が、どうにも気になるらしい。けれど彼の髪は秋のそれとは違って重力に対して従順なので、耳に留まっていてはくれないようだ。
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