KISEKI 覚えているのは暗闇から迫りくる眩いばかりのヘッドライト。それが反対車線から突っ込んできた居眠り運転の車だったということは病院のベッドの上で聞かされた。
命に別状はなかったが身体中包帯だらけで退院するのに長い時間が必要だった。あの惨状で誰一人死ななかったのは幸いだと言われたが到底喜べる状況ではなかった。
何故なら自分はそのせいで忘れていた過去の記憶を思い出してしまったのだから。
小学校に上がる前のクソガキが知るには重たい重たい「前世」の記憶。好き勝手やった自分の罪はまだ償われてはいないのだろう。因縁のように顎には傷が残り両の目は物を写す事をやめてしまった。
父も母もどうにかして俺に再び光を取り戻そうと躍起になってくれたがどんなに名医と謳われた医師も匙を投げ出した。
5102