あの行列の先「あの店、今日も並んでいるな」
中華街を散策していると理鶯がぽそりと呟いた。隣にいた銃兎が「観光客の定番スポットですからね」と解説する。確かあの焼き小龍包の店は観光ガイドに載っていたはずだ。焼き小龍包という特性上、歩きながら食べると灼熱の肉汁が周囲に飛び散り火傷必須の爆弾である。そんな危険物を食べ歩きとして売り出したところ、店の前には熱々の小籠包を頬張り悶絶する客が溢れかえったのは一時話題になったものだ。
「こんな暑い中、熱いもの食べるなんて」
銃兎が眼鏡を外しながら額に滲んだ汗を拭う。真夏日と天気予報士の姉ちゃんが言っていたはずだが、理鶯は相変わらずの迷彩服。銃兎に至っては熱を吸収しやすいいつもの黒いスーツをきっちり着込んでいた。多分、コイツらは天気予報を見ていない。でなけりゃ、こんなクソ暑い格好を好んでするはずがない。
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