プレゼントには口付けを鳴り響いたチャイムに肩を跳ねさせ、遙は玄関の扉へと視線を向けた。
六月二十九日の午後九時を少し回った今。
こんな時間にチャイムが鳴るなんて随分と珍しいと、遙はそっと足音を立てずに扉へと近付く。
明日は真琴達が何やらお祝いをすると張り切っていたが、こんな時間に来るとは聞いていない。
ドアスコープからそっと来客の顔を確かめる。
レンズの向こうには、どこか落ち着かなさげな恋人の姿。
ドアノブを握り、少しだけ間を置いて開かれた扉。
扉の先でどこか安心した様子の楓は、開口一番遙にこう告げた。
「少し付き合ってくれ」
移りゆく窓の景色に視線を向けたまま、遙は楓の運転する車の助手席に腰を下ろしている。
顔を合わせるのは久しぶり、楓とは小さな喧嘩をしていた。
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