その笑顔が欲しい「これで必要なものは全部かな」
「ですね。付き合ってくださってありがとうございました!」
「いえいえ、コンミスの頼みならいくらでも」
そう言って仁科さんは軽くウィンクを飛ばした。
休日の昼下がりということもあり、いつもよりも人通りが多い。
今日は買い出しだからヴァイオリンを置いてきたけれど、演奏したら楽しそうだなぁと思わず周囲を見回した。
「あ」
その時、私の目にあるものが飛び込んできた。
「すいません、仁科さん。ちょっと寄ってもいいですか?」
「うん、もちろん」
仁科さんに断りを入れた後、私は引き寄せられるようにあるものの傍に近づいた。
雑貨屋さんの一画にあるアクセサリーコーナー。
そこに飾られていたのはヴァイオリンの形をしたピアスだった。
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