Man in the mirror イケブクロ。
二年ぶりの街は平和ボケした平凡な人間どもで賑わっていた。
これがあの男の支配する世界。
真っ赤なジャケットを羽織り、道行く人に声をかけられて爽やかに笑顔を返す男。
山田一郎。
どうするかは考えていなかった。
今の俺の眼にその姿を映して、湧いてくるものがなにかで決めようと思っていた。怒りか、悲しみか、落胆か、あるいは……出てきた感情に身を任せるつもりだった。
胸に熱が籠っている。だがそれがなにかよくわからない。激しい感情であることは間違いないのに、どんな言葉も当てはまらない。
「谷ケ崎……?」
こっちの行動が決まる前にあいつが呟いた。
日本随一といってもいい人ごみの中で、雑音を貫いてきた。
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