未練※捏造、えっちなし
「本当にやんのか?」
天谷奴零はじっと一郎を見下ろす。
この期に及んで、はじめて親みたいな声色だった。
「そいつを使えば、お前は……」
「俺がやらなきゃしまらねぇだろ」
一郎は堂々と目を合わせた。
「全部計算ずくって言い方だな。誰に似たんだかねぇ」
「俺の目的が変わってねぇだけだ」
手に持った真正ヒプノシスマイクを握りしめ、零の横を大股で通り抜けた。
特別な別れのことばなんかくれてやる気はなかった。あの日の零もそうだったからだ。
中王区の巨大な壁の前に集結した十八人の男たち。
「お前ら、準備はいいか!?」
一郎はいつものように一番前に進み出て全員の顔を見渡した。
大切な弟二人が一番近くで笑っている。かつての仲間も、まだ十分に因縁を解消したとはいえないが、真っ直ぐに一郎を見ていた。すくなくともこの目的だけは共通だ。
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