彼にキスをした日(魈ver)「お前……我の面に触れたな」
儺面を眺めていた魈はそう言った。
問いかけるというよりは、確認するような口振りだった。
昨夜魈が仮眠を取る間、彼の面を預かっていたことを言っているのだろう。
だが空はあの時、確かに魈に「預かる」と声を掛けた筈だ。
「昨夜眠ってる時に少し預かってたよ。そうじゃなくて?」
魈は面を検めるとその額に鼻先を寄せて確認するように目を閉じると、再び空を見た。
「額にお前の元素が残っている」
「……っ、」
ぴくりと空の肩が跳ねた。
そこは、空が口付けたところだ。
安らかな眠りを祈る以外に他意はなかった筈が、なぜだか後ろめたいような気がする。
改めて自身の行為を顧みることに気後れして、些かずれた返答をした。
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