stars九話進捗 呼吸を、一つ。
瞬きを、二つ。
ゆっくりと周囲の輪郭が形を持つ。
小さな影が駆け回り、暖かな手が腕に触れる。
「──────ぁ…」
「! 目が覚めたのか!」
小さな獣が、掠れた吐息を目敏く聞きつけてこちらを覗き込んでくる。
驚きと安堵に満ちたその声が、揺蕩う意識の海に投げ込まれた《声》と同じもので、男はほうと心の底から息を吐いた。
ああ、おれはこの人に助けてもらったのだ。
「ぁ……ぁり、が、とぅ…」
「うん、いいんだ。医者として当然のことをしただけだからな。それよりどっか痛いとこあるか? 気持ち悪かったりしないか?」
「だい、じょう…ぶ」
目覚めた眼の前に“彼女たち”が居なかったことは、少しだけ残念だけど。
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