冬・雪の情景 白く塗りつぶされた景色が珍しく、冷たい雪の積もったトピアリーを眺め歩いた。
この寒い中、酔狂とも言える散歩をしている者はほとんど居なかった。すっかり冷えてしまったとミトンに包まれた両手をすり合わせると、
「冷えてしまいましたね」
戻ったら、熱い紅茶を淹れましょう。と従者が囁く。
その声に頷きかけ、パトリックは彼の薄手のコートの袖から覗く手を取った。
「パトリック様?」
怪訝な顔をするリッキーの手はレースのグローブに包まれてはいるが、そんなもの、あって無いようなものである。明らかに赤くなった指先に自分の体温を移すように包みこみ、そっと息を吹きかけた。
***
「乾燥してはいけないわっ」
ルゥはルイーズに言われるままに絹張りの椅子に腰掛け、落ち着かぬ尻をモゾつかせていた。
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