izkk 夢を見ていた。
闇の中で和泉さんが刺される夢だ。
ナイフで刺された和泉さんが崩れ落ちるように倒れて、地面に血の池がゆっくりと広がっていく。
自分はそれを離れたところから見ている。
駆け寄りたいのに一歩も動くことができなくて、しかも、ひとつ瞬きをするたびに、その光景は初めからスタートし、ループする。
ここが病院だと菊之助が気がついたのは、ぐるりと天井に視線を巡らせて、見慣れない蛍光灯を見つけたからだった。それに、消灯されてはいるが個室のなかはぼんやりと明るく、天井と同じく壁も白い。うっすらと薬品の匂いも漂う。光の入る方向へ目をやると、アルミの枠に囲まれた空に灰色がかった雲が流れていた。
生きて帰ってきた。息を吐き、目を閉じて、昨夜の作戦を思い返す。相手の人数が想定より多いアクシデントに苦戦を強いられたが、なんとか抑えることができた。逃げようとするトップを捕まえて、床にねじ伏せ、連絡を受けて飛んできた仲間に後を任せた。そこまでの記憶はしっかりと残っている。やり遂げた。終わったはずだ。これで長く続いた悪夢も見なくなり、あの人も新しい人生を送れる。
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