夢と眠る「さっちゃん、これ、何の匂いか分かるか?」
「急にどうしたの。クイズ?」
春日が胸ポケットから差し出したハンカチを手に取って、紗栄子が眉を上げる。怪訝な顔をしながらも受け取ったハンカチにそっと顔を寄せて、すんすんと静かに鼻を鳴らした。
「あ、いい匂い」
「だろ」
ハンカチからは甘くて優しい香りがする。紗栄子の同意を得られて春日は嬉しそうに微笑んだ。
「なんだろ……ラベンダーは入ってそうね。あとは何か……ウッド系かしら。これ、もう匂い付けてから結構経ってるんじゃない? 薄れちゃっててわかんないわ」
クイズにしては問題の意地が悪いと、紗栄子は唇を尖らせてみせた。春日は首裏を掻いて頷く。
「ああ、そうかも。昨日の晩だから……勿体ねえから、あんまり広げないようにして取っといたんだけど」
4601