ハッピーエンドは決闘後 銃後で紙と鉛筆を持つ少年はとっくに十五を過ぎ去り、緋色の空を背負って戦場に立っていた。彼の戦略は五十分の一程度しか届かなかった。けれどもそれはまだはじまりにすぎないことを、彼は知っている。
幾つもの戦場を駆け回り、幾つものを景色を見て、幾つもの命を見届けて。
それを隣で見届けることのない少女が、同輩たちと共に静かに学園で少年の帰りを待っていた。ときに長く伸ばした髪を弄び、ときにその二つ名を違えることなく言葉を連ね、ときに一人の少女として。
「たゆたん、いつまでそうしてるつもりなの」
「なんのことですか」
教室の窓。小さく切り取られた空を見上げていた視線を落とし、少女――夕方多夕は東洲斎へと向き直る。なんともないように、いつも通りの表情のまま近付いてきた幼馴染を見て東洲斎は一つ息を吐いた。何年も傍にいたのだ。お互い伝わらないとは思っていないだろう。なにより、少女らは暗号兵なのだ。言外の言葉だって、正しく読み取ってしまう。
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