夢見て偶像 酔っ払いの相手は往々にして面倒なものだ、と陽気に笑いながら肩を組んで体重をかけてくるグレゴールを押し除けながらムルソーは思った。
業務を終えてバスの後部の各自の部屋に戻っていく囚人たちの中で、管理人であるダンテがムルソーを呼び止めた。先の戦闘で使った新しい人格の感触を聞きたいとのことで、ムルソーは列から離れて踵を返し、しばらくダンテと話し込んだために帰還が遅れた。
思ったより時間をかけてしまったことを詫びるダンテに変わりない終業の挨拶をして、今度こそ自室へと戻ろうと廊下を歩き出したムルソーの手を壁際で待っていたグレゴールの手が掴んで引き留めた。その時点で頬はうっすら赤らんで、眼鏡の奥の両目は陽気に細められていた。アルコールに浸った息を吐いて、掴んだ腕を引きながらグレゴールは笑った。
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