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君を見つけた時、息が止まるかと思った。
透明なガラスの向こう側。カフェの制服である黒のエプロンを身に着け、どこかのサラリーマンへにこりと笑顔を見せている。
そんな笑顔は知らなかった。いつも眉間に皺を寄せ、睨むように人を見ていたから。
いや、違う。知っている。
気の許した仲間の前で。
深夜の執務室で。静かな私室の部屋で。
ごく稀に。ごく僅かに口角を上げて、不器用に、けれど優しく小さく笑う表情を知っていた。
リヴァイ兵士長。
幼い頃から記憶にある、人類最強で俺の腹心の部下。
「いらっしゃいませ」
自動扉が開き店内に足を踏み入れると、若い店員の声が聞こえてくる。一週間迷い悩んだ末に来てしまった店。ゆっくりと足を動かし、レジに近い位置のテーブルに座った。
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