無題彼と知り合ってまだ間もないが、話をする度に不器用な人なんだと思い知らされる。
後輩として気を遣ってくれているようで、性別の違いから生まれる気遣いがとんと無かったり、試験で上位を勝ち取れるほど賢いようで時には無鉄砲さで周囲を困らせる。
恐らくこの、豪胆さと賢俊さを器用に持ち合わせていることが彼の魅力なのかもしれない。
そんなことを味噌汁を啜りながら有里はふと考えていた。
今日だって彼の行きつけの牛丼屋に向かう時に絡まれた女子への対応すらどこかズレていた。
恐らく女性からの好意に興味がないのだろう。
「真田先輩に惚れた女の子は可哀想ですね」
「……唐突になじられる俺は可哀想じゃないのか」
そういう返しも出来るのかと思わず笑うと彼は居心地が悪そうに椅子を座り直す。
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