おまじない 一瞬の静寂の後に空気が揺れる。歓声と拍手が止まった時を動かして、勝者を称える。スタジアムが熱い空気に呑まれてまるで炎の渦の中に居るみたいだった。
「勝者、スグリ──!」
わ、と声が盛り上がる。その熱狂の渦中のトレーナーは周りのことなど見ていなかった。少年の目の前にいる少女が悔しそうな顔をした。すぐさまその顔は消え失せてはにかんで見せたけど少年には──スグリはしっかりとその表情を目に焼き付けた。
吊り上がる口角を抑えつけながら、いいバトルだったよなんていつか彼女が言った言葉をそのままスグリは言い返す。勝ったのだ、ついに。俺には、力がある。だから欲しいものは全部手に入れたい。
強さがあれば、手に入る。だって姉ちゃんも鬼さまも×××もみんなそうだったはずだ。だから今度は俺が欲しいものを手に入れなくちゃ、おかしい。
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