アクアレトリウムの夢②-1水の流れにただ身を任せ、漂っていた。
美しい色とりどりの魚たち。静寂に包まれた、無音の世界。手を伸ばせば、何にでも手が届くような気持ちになる。
ここにはカナタを傷つけるものは何も無い。
ただ温かく、包み込むだけだ。
(……ずっと、ここにいたい)
静かな、この世界で。
穏やかな、この世界で。
――優しいこの夢の中で
アクアテラリウムの夢
「カナタ! なあ、カナタ!!」
呼びかける声に、カナタははっと目を覚ました。目の前には、どこかほっとした表情を浮かべるカイトが座っている。慌てて周囲を見渡せば、カナタたちと同じように机を陣取りテキストを広げる者、トレーをもってどこか席はないかと探す者、それぞれの目的に合わせて動く学生たちの姿が見える。手元には筆記用具とテキスト、そして氷が溶けてぬるくなったジンジャーエール。
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