張飛×関羽の冒頭 その日は、明け方にかけて強い雨が降っていた。
そのおかげで空気中に泳ぐ砂塵が洗い落とされ、分厚い雨雲さえさってしまえば朝の空はむしろ晴れ晴れと、胸を貫くような青さであった。
惨劇の匂いがまだ染みついている都市の、無骨な骨組み達にも細かな雨粒が光り、僅かに煌めく。
――高層ビルの残骸。傾いたアンテナ。ひしゃげた鉄骨。崩れたコンクリート。割れた路面。
そのどれもが、かつてここに人の営みがあったこと、それらが無残に破壊されたことを無言で物語っていた。
ラクヨウ。
キングダムワールドでも随一の栄華を誇ったエリアは、かつて斜陽の影に覆われていた。正しく全ての発端が何であったかは、もう知るものはいない。だが、少なくとも、ここがキングダムワールドを襲った災禍である黄化トリニティの蔓延、その中心地であったことは間違いない。
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