僕の弟 実休が目を覚ましたのは、いつもよりもほんの少し早い時間だった。ぼんやりとした意識が、次第に覚醒する。瞼を押し上げ、うう......とくぐもった声を出した実休は、のそのそと布団から這い出た。
「あれ......?」
いつもなら、これくらいの時間には、弟のどちらかが声をかけに来てくれるのだが、今日はその声がない。二振とも長期遠征だっただろうか。いや、昨日の出陣表には、だれの名前もなかったはずだ。
不思議に思いつつ、ん、と伸びをした実休は、部屋の入口あたりから、何かがカリカリと引っ掻いているような音を拾った。そう、まるで、猫が引っ掻いているような。
猫なんてこの本丸にいただろうか。首を傾げつつ、すっとふすまを開いた実休は、足元のにめをやって、え、と声を出した。
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