ハートに火を付けてその本丸の実休光忠は常に他者に囲まれていた。
彼が持つ輝かしい来歴も然ること乍ら、とても人懐っこい性格で、先輩男士たちにあれこれと尋ねては人の営みを楽しんでいた。
特に薬研藤四郎とは気が合うようで、同じ部隊になる度、薬草摘みに夢中になり過ぎて長谷部に叱られるのが常だった。
教育係の燭台切は自由奔放な兄に少しばかり手を焼きつつ、それでも本丸に直ぐ馴染んだ様子に胸を撫で下ろしていた。
今日も実休は厨当番を手伝うと言って意気揚々とニンジンの皮を剥いている。
「光忠、これでいいかな?」
「うん、バッチリだよ! 次はジャガイモをお願いね」
「ということは、今日はかれーらいす?」
「ふふ、今日はクリームシチューだよ」
こないだと同じ材料なのに!と良いリアクションをするので燭台切は笑いながら解説する。
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