名前なんて、なんだっていいよ 新宿・歌舞伎町。この地には都市伝説と化して、ある話がまかり歩く。
〝五条悟の名刺を手にした者は、この世の全てを手に入れる〟
「いや、五条悟って誰すか」
「さぁ? 俺も詳しくは知らん」
紫煙を夜に吐き出して、二人の男は談笑にふけっていた。年若い男はつい先日働き始めたばかりの新人で、一回り以上年の離れた男が面倒を見ていた。休憩がてら、こうして裏手に連れ出している。
「俺たちみたいなこの街の端くれクラブにゃ縁がねぇがな。居たとしたら向こう側の、一晩で億以上の金が動くような所だな」
「億ゥ!?」
ごくりと喉が動くのを見て、素直な奴だと口角が上がった。
「お前初日、見事な金髪にしてきたろ。可哀想なことに速攻黒染めさせられてたけど」
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