歳の差エール(30×17)自暴自棄になっていた。
幼い頃から、顔も知らない犯罪者の子どもと罵られ、鬼の子だと厭われ、世界を憎み、自分を疎み、だからといって死ぬ覚悟もないまま、ただ泥を啜って生きてきた。
いつの間にか踏み入っていた裏の世界で、ヘマをしてボロ雑巾以下になって道端に文字通り落ちていた。
土砂降りだった雨は止んでいるが、ぬかるんではねた泥や血や何かでぐちゃぐちゃなおれを、誰も見つけたりはしない。
腹も減っているが指一本動かせず体も冷え、ただこのまま死を迎えるだけかと、薄目で見つめていた雨の跡が残る水溜まりに、小さな黄色い長靴が現れた。
「でけェいぬがいる!」
「…犬じゃ、ねェ」
好奇心旺盛な、履いている長靴と同じくらい明るい声が降りてきた。
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