国境クッキング①本日も曇天、明日も曇天!帰路につく同僚が横でそう言っているのを聞きながらイリヤは手袋を嵌めた両手を擦る。彼らが言うように灰色の雲が垂れた空はどんよりとして今にも雪が降りそうで、本格的な冬が来たなと嫌でも自覚させられた。12月のその痛いくらいの冷たさは、慣れていても思わず身震いする程に厳しい。
「さて、我らが末の弟はちゃんと最後まで出来てるのかね」
「また壺を焦がして炭が出来てるに一杯かけるか?」
「ハハ。……いいや、今日はやめとく。さすがにあれだけ失敗したら夕食はマトモだろう」
本日の食事当番はヴァシリだったのだが、彼が煮炊きが苦手だった。朝はイリヤの力を借りかろうじてブリヌイにありつける事が出来たのだが、昼は肉の煮込みを壺に入れ、ペチカの中で盛大に吹きこぼして炭にしてしまったのだ。
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