卒業までのメインディッシュ 記憶の上書きでは生温いとホークスは結論付けた。自分に魅力がないからと奪われるのは納得できる。魅力的な方を選択することは、常闇のよりよい未来への礎となる素晴らしいことだ。だが、ただ傍にいたから、ただ近くにいたからなんていう、そんなくだらない理由で奪われてたまるか。それはホークスの胸に燃え上がった、初めての我欲の炎だった。
これまでホークスは、極力常闇の学生生活を尊重してきた。卒業したら福岡に就職し、毎日会えるようになるのだから、高校三年間は級友たちとの思い出作りに水を差すことのないようにしてきた。だから常闇が二年生の時、体育祭にも行かなかった。学校行事を経験したことのない自分は知らないが、きっとたくさんの楽しい経験を積み重ねているのだろうと思って。
10056